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Key Questions
Q1:大規模に被災した陸前高田市の今は?
Q2:ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくりとは?
Q3:新しいまちづくりに向けて行政と療法士が協働する取り組みとは?
はじめに:陸前高田の今
岩手県陸前高田市は,岩手県沿岸の最南端,宮城県との県境にあり,震災前の人口は約2万4,000人のまちであった.震災による津波被害により市の平地部はほぼ流出,1,700人余りの尊い命が犠牲になった.高台での住宅の新築,移転は進んでいるものの,4年半が過ぎる今もなお,4,500人ほどの市民の方々が仮設住宅で暮らす状況が続いており,人口も約20,000人と,震災前後で4,000人近くも減少している(表1).震災で犠牲になられた方々の多くが高齢者である一方で,人口減少には,いわゆる生産年齢・子育て世代,子どもの市外への転居が大きく関係している.市の高齢化率は震災前の33.5%から現在は35%以上となり,これは短期的にみてもますます加速すると予想されている.現在はハード,ソフト両面のまちづくりが急ピッチで進められているが,それでも働く場所の少なさや,インフラも含めた利便性は震災前よりもはるかに低い.津波によって壊滅した,過去の市街地だった地域は,10mを超えるほどのかさ上げ工事が為され,防災を目指したまちの土台づくりが続いている.現在は土色の風景が広がっているこの地域も,きっと数年後には新しい住宅や商工業施設,市民が楽しく生活できる暮らしのスペースができるであろう.復興の足音を今は感じ取ることもできる.2015年度(平成27年度)になり,まちの再生は目に見えるかたちで明らかになってきている.次々と建設されている災害公営住宅(マンションタイプ)の完成入居,県立高田高等学校の新築開校,大勢の市民の集いの場となるコミュニティホールの完成等,大規模な建物工事が完成してきていることにも,まちの再生をうかがい知ることができる.市民,子どもたちの集まるあたり前の光景が,陸前高田に活気を取り戻していることも少しずつ感じる.震災後の土色の風景が,人が集う賑やかな風景に変わりつつある.陸前高田は今,復興の真っただ中にある.
本稿では,陸前高田において筆者らが携わっている障害者・障害児支援,またそれを取り巻く障害福祉の現状を報告するとともに,行政と市内の療法士が一体となって取り組みを始めようとしている介護予防事業の企画,療法士がまちづくりに参画する仕組み(本稿では陸前高田リハシステムと呼称)の経過報告等,「障害者支援」,「高齢者支援」の2つの視点から,被災地の現状と生活の復興を共に歩むためのOTの活動を紹介する.
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