特別寄稿
未来図を描く公衆衛生活動in陸前高田③―新たに生まれている「格差」と向き合うために
佐々木 亮平
1
,
岩室 紳也
2
1岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構 臨床研究・疫学研究部門
2公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.1001-1005
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102915
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
新たな格差
発災直後の避難所生活では,とにかく生きていくための環境整備がすべての人に共通したニーズであり,未来図のような計画がなくても,現地の状況がよくわからない全国からの応援者も,生きていくというその一点を目指した対応や支援ができた.避難所から仮設住宅に移る際も,早く移れる人,遅くなる人がいても,結果的にはどちらも「仮設住宅」に移ることに変わりはなかった.しかし,2年半余り経ったいま,仮設住宅から次の住処(すみか)に移る際に大きな差,新たな格差が出てきた.
仮設住宅に2年以上暮らし,それなりに近所づきあいも生まれ,コミュニティが形成されていると考えられている仮設住宅から出る際に,近所への挨拶ができないまま夜逃げのような形で仮設住宅を出る方が少なくないという声が聞かれるようになった.今の時点で仮設住宅を出られる人は自力再建できた人たちである.その一方で,完成がまだ先になる公営の災害復興住宅への入居を余儀なくされている人がいる.家族を含めた被災状況,年齢,仕事,貯金といった個々人の異なる様々な状況の中で,避難所から仮設住宅までは同じ環境で生活していた者が異なる生活を余儀なくされはじめるのがこれからの現実であり,自力再建ができる者からすれば,自分だけが喜んでいるわけにはいかないという思いになる.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.