連載 ご当地作業療法・第4回
語り部活動の支援を通して
森田 まゆみ
1
Mayumi Morita
1
1長与病院通所リハビリテーション
pp.873-875
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100599
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被爆地長崎と声を失った語り部
長崎は,第二次世界大戦終局に原子爆弾の投下を受けた.強い破壊力をもった1発の爆弾で多くの人が亡くなり,街は一瞬にして焦土と化し,川は血で赤く染まり,焼けただれ苦しみ悶える人々で地獄の様相を呈した.生活を営んでいた日々は爆風で吹き飛んだ.生き残った人々も身体の痛みと大切な家族や友人を失った深い悲しみを背負った.その激烈な体験を,決して風化させてはならない,語り継がねばならないと強い使命感をもって語り部活動に取り組んでいる人たちがいる.
語り部A氏が80代に入ったある日,のどに異常を感じ受診したところ,がんが見つかった.手術を受け声帯を切除した.A氏は命と引き換えに語り部として大切な声を失った.戦争はいけない,平和の大切さを子どもたちに伝えなければならないと取り組んでいた活動がもうできなくなると絶望に陥った.手術を受けて約半年後,介護支援専門員の勧めで,通所リハを週2回利用することになった.OTがかかわって,喉頭摘出者の福祉器機である電気式人工喉頭を使って声を取り戻したこと,語り部復帰を果たしたこと,その後も活動を支援し続けていったことについて報告する.
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