- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
IT(information technology:情報技術)は,コンピュータ等の機器,ソフトウェア(以下,ソフト)を用いて情報の取得や発信をする技術のことをいい,ICT(information and communication technology:情報通信技術)もほぼ同義に用いられている.このITは意思伝達手段,福祉用具として利用できる(図1)が,高齢者や障害者はIT機器を使いこなすことが難しいことも多いため,導入に際しては高齢者や障害者の心身機能に適した機器やソフトの選択,環境整備,制度利用の支援を担う人材が求められている.総務省が2004年(平成16年)から開催した「障害者のIT利活用支援の在り方に関する研究会」の報告書では,OTが地域でIT支援の核になっていると指摘しており,「IT支援を業務の一環としてとらえることで,リハビリテーションの観点から,IT支援を進めることが可能である」1)と,OTへの期待が記されている.
また,ITはRT(robot technology:ロボット技術)と連携し,コミュニケーションや見守り支援としての活用が見込まれている.経済産業省と厚生労働省は,ロボット技術による高齢者の自立支援,介護者の負担軽減や新産業創出のため「ロボット技術の介護利用における重点分野」2)を2012年(平成24年)に公表している.そこでは,移乗介助(装着型・非装着型),移動支援,排泄支援,認知症の方の見守りの4分野5項目を重点課題分野として挙げており,これを2014年(平成26年)2月には改定し,入浴支援を加えた5分野8項目に拡大した.製品の開発が進み,施設だけでなく家庭への普及に向けて,平成26年度予算には「ロボット介護機器開発・導入促進事業」3)を設けて実際の現場で活用しながら効果検証を行うようになっており,その成果が待たれるところである.
さて,湯布院厚生年金病院(以下,当院)ではこのような時代背景を受けて,ロボット機器の導入と効果検証にも取り組んでいる.たとえば,ホンダ歩行アシスト(株式会社本田技術研究所)を片麻痺患者で利用し,歩幅や歩行速度の改善について三次元動作解析装置を用いて分析を行っている4).作業療法では患者の発動性やコミュニケーションの向上を目的にアザラシ型メンタルコミットロボットパロ(株式会社知能システム)を利用しており,その効果を近赤外分光法(NIRS)を用いて脳機能の変化の検証に取り組んでいる5)(図2).
IT,RTのいずれも利用者の立場で製品を選び,その人の活動を引き出せるようにカスタマイズを担う人材が必要となる.作業療法で行うIT活用支援とは,自立度や社会参加の拡大を目指し,個々の希望と障害の状況に合わせてIT機器の利用環境を構成すること,さらには潜在化しているニーズに対してITの利用を結びつけることである6,7).
本稿のテーマである生活期の脳卒中患者におけるIT技術の活用について事例を通して支援のポイントを述べる.
Copyright © 2014, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.