増刊号 脳卒中の作業療法―支援技術から他職種連携・制度の利用まで
第3章 支援技術Ⅱ 急性期から回復期の個別性を重視した介入(事例報告)
1 高次脳機能障害がある方への作業療法 ③前頭葉症状
鈴木 孝治
1
Takaji Suzuki
1
1国際医療福祉大学 小田原保健医療学部
pp.665-671
発行日 2014年6月20日
Published Date 2014/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100557
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はじめに
ヒトの高次脳機能を考えるにあたり,意識,注意,情動,認知,言語,記憶,行為等の各要素的な機能が思い浮かぶことと思う.そして,前頭葉に関する機能については,遂行機能を用いることが多い.
前頭葉の機能に関して神経心理学的立場から,遂行機能または実行機能(executive function)という用語を明確に規定したのはLezak1)であるといわれている.遂行機能は脳の構造や神経基盤との関連が薄く,局在的意義の乏しい概念で,要素的機能とは相互に関連するものの,それらからは独立した上位の機能単位として位置づけられるという特徴をもつ.具体的には,メニューを考えるところから始まり,材料を買いに行き,実際に調理し,味見をし,片づけまで行う料理という一連の活動や,旅行計画を立てて,準備し,実際に旅行に行く等という一連の活動等である.すなわち,①目標の設定,②プランニング,③計画の実行,④効果的な行動という4つの要素を含んだ,目的をもった一連の活動を有効に成し遂げるために必要な機能といえる2).
ところで,種々の高次脳機能の中で,「前頭葉」という解剖学的な部位に「機能」という用語をつけた「前頭葉機能」という表現に違和感を覚えるのは筆者だけであろうか.これは,まさしく脳の構造と神経基盤を意識した表現である.今回,筆者に与えられたテーマは「前頭葉症状」であるので,前頭葉の機能が障害されたときの症状について,できるだけ前頭葉の解剖学的部位からの分類に基づいて各症状を概説し,関連する評価および介入の原則を述べ,前頭葉症状を呈した自験例を提示したい.
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