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はじめに
今から40年前(1970年代)のわが国では,脳卒中に罹患すれば安静臥床が必要という考え方が支配的であり,発症からリハを開始する時期は極めて遅延していた.また,当時のリハサービスの主たる担い手は,主に山間僻地にある温泉病院であり,都市部の急性期病院におけるリハサービスは極めて乏しかった.このため,リハサービスを受けるには生活圏から遠く離れた温泉病院に転院しなければならず,発症から数カ月後にリハが開始される時代だった.1980年代に入り都市部の一般病院でもリハサービスが開始されるようになったが,診療報酬による評価が低く,一部の国公立病院が政策医療として申し訳程度のリハサービスを開始したにすぎなかった.1990年代になり脳卒中では安静臥床が必要という考えが衰退し,発症早期から開始されるリハの重要性が広く認められることになった.同時に診療報酬にて急性期リハが評価されたが,発症早期にリハサービスを開始する病院は少なく,早期リハの普及には至らなかった.
1965年(昭和40年)に理学療法士及び作業療法士法が施行され,1980年(昭和55年)にリハ医学会専門医制度が開始されたが,1990年(平成2年)当時のPTおよびOTの国家資格保持者数は1万5,000人程度であり,リハ専門医数は100人に届かず,言語聴覚士法の制定は1998年(平成10年)と遅れた.リハにかかわる専門職の養成が追いつかず,リハを提供しようにも専門職が乏しいため,どうすることもできなかったのである.
こうした状況が一転したのは,わが国の人口の高齢化である.高齢化社会から高齢社会,さらに超高齢社会へと一気に進む中で,老人医療費の高騰や介護の問題が浮上し,1994年(平成6年)「高齢者介護・自立支援システム研究会」により,高齢者の自立支援,予防とリハの重要性が指摘されたことに始まる.1997年(平成9年)に介護保険法が成立し,2000年(平成12年)の施行へと進んだことは,リハ専門職の養成に拍車がかかり,リハ医療普及の引き金を引くことになったと考えられる.
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