特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第2章:中枢神経系に関するもの
5.認知神経リハビリテーション
宮口 英樹
1
,
内山 将哉
2
,
本田 慎一郎
3
,
玉木 義規
4
1広島大学大学院
2沖永良部徳洲会病院
3守山市民病院
4甲南病院
pp.653-660
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100171
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認知理論に基づいた治療介入
認知神経リハビリテーション(以下,認知神経リハ)は,1970年代後半にイタリアの神経科医Carlo Perfettiによって提唱された認知理論に基づいたリハの治療介入の方法論である.Perfettiは,「脳損傷後の運動機能回復は病的状態からの学習課程とみなすことができる.回復を目的とした運動療法を実施しようとするならば,運動療法が患者の認知過程の特徴や意志の変化を徐々に複雑化させてゆくことによって,患者の行動を再組織化しようとする治療法であることを理解しなければならない」1),「回復の程度や質は,それが自然回復であれリハビリテーションにより導かれたものであれ,どのような認知過程が活性化されたか,またそれがどのように活性化されたかによる」2)と述べ,認知過程への適切な治療的介入が脳の可塑性を高めるとした.
認知過程とは,知覚・注意・記憶・判断・言語・イメージを表し,さまざまな生活環境場面に人が適応しようとする一連の情報処理の過程である.この認知過程の情報処理に何らかの障害が生じると,生活場面でさまざまな問題(障害)が生じる.認知の定義は諸説があるが,認知機能は独立した機能ではなく(生活)環境と切り離せない能力であるという説明が,人と作業と環境の相互作用を重視してきたOTにとってもなじみやすいだろう.
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