特集 運動とは何か
定期的な運動(身体活動)のもたらす健康上の効果
小熊 祐子
1,2
1慶應義塾大学スポーツ医学研究センター
2慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科
pp.437-440
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102440
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はじめに―現代社会と運動不足病
「身体を動かすことは,健康に良い」ということは,古くから言われている.紀元前2500年には,中国の医師が定期的運動を指示したことが記録されている.ヒポクラテスの言にも“To keep well, avoid too much food, too little toil”とある.ただ,身体を動かすことが切実な問題となったのは,文明化,機械化が進んで,仕事の上でも,家事においても,あるいは交通手段としても,身体を動かす必要が少なくなってきてからである.それとともに,運動不足病とも言える種々の慢性疾患が問題となった.併せて,身体を動かすことにより発症リスクを軽減できる疾患が多いことも明らかになってきた.
カナダのオンタリオ地区に住むアーミッシュ(Old Order Amish)は,宗教上の理由で,現代社会の文明機器を退け,車や家電,テレビ,パソコンなどを使用せず,自活している.このうちの98名を対象に調査したところ,1日の平均歩数は女性で14,196歩,男性で18,425歩と身体活動量が多く,平均BMIは約23kg/m2と低く,肥満や過体重者の割合も米国の平均に比し極端に低いことがわかった(図1)1).現代社会は,日常生活の中で必然的に行う身体活動が減ってしまった分,自発的に何らかの活動量アップをはからなければならない時代と言えよう.
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