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編集後記
北島 政樹
pp.92
発行日 2002年2月15日
Published Date 2002/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900298
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本邦において,腸疾患に対して腹腔鏡下手術が導入されたのは1992年頃のことであろう.それから10年の歳月が過ぎ,腸疾患のなかでも大腸癌は胆石症につぐ腹腔鏡下手術の適応疾患となった,当初,欧米で腹腔鏡下手術の対象とした大腸癌の大部分が進行癌であったが,技術的に成熟していないにもかかわらず腹腔鏡下手術を導入したために,いわゆるポートサイト・リカレンスという本術式に特有な再発を招いた.残念ながら,この再発形式が欧米ではきわめて問題視され,大腸癌に対する腹腔鏡下手術の普及が一時的に妨げられた事実は否定できない.一方,本邦では欧米とは異なる過程を経て,腹腔鏡下腸切除術は普及してきた.すなわち,腹腔鏡下手術が早期癌を適応として認知され,内視鏡的切除と開腹手術の隙間を埋め合わせる新しい手術手技として位置づけられ,そののちに,手技の進歩にともない徐々に進行癌に適応が拡大されていった.もし,欧米でも早期癌が一般的であったなら,同様の経緯を経て腹腔鏡下手術がもっと速く普及したかもしれない.本邦においては,腹腔鏡下手術が独自の過程を経て普及してきたことが,安全な手術手技の向上,腹腔鏡下解剖学の重要性の認識をもたらしたと言えよう.これは開腹手術における精緻な手術手技が土台にあってこそ成し得たものである.現在は腹腔鏡下手術の低侵襲性のみならず,拡大視効果を利用した精密なリンパ節郭清や神経温存にこの手術の意義を見出すまでに至った.
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