特集 いま,腹腔鏡下胆嚢摘出術困難例を考える
〔エディトリアル〕腹腔鏡下外科手術の原点に立ち返って
田中 雅夫
1
1九州大学医学部第1外科
pp.6-7
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900001
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いま,日進月歩の発展を遂げている腹腔鏡下外科手術が,胆嚢摘出術に端を発したことはいうまでもない.以来,鼠径ヘルニアから脾摘,幽門側胃切除,結腸半切・全摘,果ては総胆管嚢腫切除・再建や膵頭十二指腸切除まで,適応の問題はあるにしても非常に多くの腹部の外科手術を腹腔鏡下に行うことが技術的に可能となり,われわれの教室でもすでに,乳腺・甲状腺も含む全手術症例の4分の1から3分の1が腹腔鏡下手術に置き換わった.
こうしたなかで,胆嚢摘出術は最も容易な初心者向きの手術とされ,腹腔鏡下手術習練の第一歩とみなされている.ところが,開腹手術の時代でもそうであったように,この手術ほど少しの油断による失敗が重大な合併症を惹き起こす手術は他に類をみない.胆道外科医は古くからこのことを熟知していたが,腹腔鏡外科の時代になって,また同じ過ちが繰り返されていることは誠に遺憾といわざるを得ない.初心者がまず取り組む手術であること,腹腔鏡外科医が必ずしもよい胆道外科医とは限らないという事実が,この重大な合併症の増加をもたらしている.ある報告によると,胆管損傷率は開腹手術の0.6%から腹腔鏡下手術の0.95%へ増加し,胆管の細い例,胆嚢摘出困難例に多く,レジデントクラスより困難例を担当するスタッフの手術例に多いという1).
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