特集 半側空間無視
—エディトリアル—半側空間無視研究の原点—Brain(1941)に学ぶ
網本 和
1
Kazu Amimoto
1
1首都大学東京大学院人間健康科学研究科
キーワード:
半側空間無視
,
症例報告
,
責任病巣
Keyword:
半側空間無視
,
症例報告
,
責任病巣
pp.843-844
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200991
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半側空間無視研究の端緒
Brain1)は「右大脳半球に関連した視覚的定位障害(visual disorientation)」を示した6症例を報告した.本論文こそ今日,半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)研究において今なおその輝きを喪っていない記念碑的論文である.この論文はUSN研究のほぼすべての論文に引用されているが,29ページに及ぶ(しかも図は2つだけで文字の大きさは9ポイント程度)ためか,その内容を詳細には記述されてこなかった.今回,2017年現在のUSN研究について後掲する先端的知見を概観する前に,本稿ではこのBrainの論文について解説し,次いで現在の課題および今後の展望について言及する.
Brainは6症例を3症例ずつ二つのグループに分け報告している.第一のグループは,「脳損傷と反対側の半側視野に限局した視覚定位障害」を示す3例で,Case 1は外傷による左頭頂葉損傷で失語,失書および着衣に対する失行を伴っていた.Case 2は髄膜腫による右頭頂葉障害例で,左空間の絶対的・相対的距離の把握が困難であった.Case 3は膠芽腫による右側頭葉障害例で,腫瘍摘出後左下4分の1半盲を呈し,左空間にある物体を発見できず閉眼でも探索できなかった.このように左右半球いずれの障害でも物体を視覚的に定位することが困難となることから,半球間の優位性は認められないと述べた.
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