別冊春号 2023のシェヘラザードたち
第19夜 五つ星の君たちへ—どのような麻酔科医になりたいですか?
田邉 豊
1
1順天堂大学医学部附属練馬病院 麻酔科・ペインクリニック
pp.103-106
発行日 2023年4月24日
Published Date 2023/4/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200339
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「どのような麻酔科医になりたいですか?」と質問をされたら,何と答えますか? 私も若い頃,思っていたことがあります。医師となって4年目くらいだったか,同じ病院の産婦人科医の先輩に「自分や家族が病気になって麻酔が必要になったら,先生に麻酔を頼みたいな」と言われました。
私は,40歳まで,自分が行った手術麻酔中に座ったことはありませんでした。「可能なかぎり術野を見て患者に背中を向けるな」と指導され,それを実行してきました。研修医の頃は,人工呼吸器,自動血圧計やパルスオキシメータは,全手術室に配置されていない環境だったので,バッグは手押しで,血圧も自分で測り,患者に触れ,薬を引いて麻酔記録も記載して…耳は,心電図の音はもちろん,術者や看護師の声にいつも傾けて…と,私と同年代から上の世代ではそれが当然の環境であり,日々,“ながら族”の訓練でした。麻酔で眠ってしまい「痛い」と言えない患者には,優しくありたいと努力しました。
そんな私の仕事ぶりをいつも見てくれていた前述の産婦人科医の言葉は,努力を評価してくれたようで,冗談だったかもしれないですが,とても嬉しかった。それからは,同じ職場の麻酔科医や外科医から「もし自分や家族が病気になって麻酔が必要になったら,先生に麻酔をやってほしい」と言ってもらえるような,今であったら「先生に“痛み”をみてほしい,神経ブロックをしてほしい」と言われるような医者になりたいと思っています。実際にそのような医者になれているかはわかりませんが。
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