別冊春号 2019のシェヘラザードたち
第19夜 “一期一会”の小児麻酔
原 真理子
1
1千葉県こども病院 麻酔科
pp.117-120
発行日 2019年4月19日
Published Date 2019/4/19
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200069
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“一期一会”という言葉がある。“生涯ただ一度まみえること。一生に一度限りであること”と辞書には記されている。恥ずかしながら私がこの言葉を知ったのは,大学入試の二次試験で小論文のお題として出てきたときのことであった。そのときは意味もわからず,文字から想像して書いたのだが,なんとか無事に合格して今に至る。それからは思い出すこともなかったが,麻酔科医になってしばらくしてから,「麻酔科医と患者の関係はまさに“一期一会”だ」と思うようになった。成人の麻酔では,ほとんどの場合,患者とは周術期の一度きりのかかわりである。麻酔科医の仕事とはそういうもので,主治医制ではない気楽さの反面,少し寂しさも感じていた。ところがこの時点では,“一期一会”の本当の意味(もともとは茶道の言葉で,茶会に臨む際には毎回これが一度の出会いと思って誠意をつくさなくてはならない)を私は理解しておらず,今回本稿を書くにあたって調べ直してみて驚いた。まさに小児麻酔における麻酔科医と患児,親との関係こそ,本当の意味での“一期一会”だったのである。
本稿では,私が感じている成人と小児の麻酔の異なるところを,解剖学や生理学とは違う面からお話したいと思う。シンドバッドや魔法のランプが出てくるワクワクするような話ではないが,おつき合いいただけたらと思う。
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