別冊春号 2019のシェヘラザードたち
第17夜 麻酔科のコア・コンピテンシーを失うな!—麻酔科医への依頼には,最善をつくして対応しよう
寺嶋 克幸
1
1三井記念病院 麻酔科
pp.107-110
発行日 2019年4月19日
Published Date 2019/4/19
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200067
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麻酔科医として働いていると,治療方針に関する相談の電話がよくかかってくる。そんなときよく耳にする言葉は「麻酔をかけられますか?」である。この“麻酔をかけられるかどうか”には,どのような意味が隠されているのだろう? 好ましくない条件下での医療行為は,重篤な合併症の発生率や死亡率,治療の成功率などがかかわってくる。その手術が唯一の治療法で,その手術をしないと致死的である,もしくは重篤な機能不全を残す緊急事態では,この疑問は生まれない。手術を計画するかどうか外科医も迷うとき,なかには「麻酔がかけられるなら手術をしましょう」などと,決断を他人任せにする外科医もいるだろう。
そのようなとき,自分自身に経験があるなら,もしくはガイドラインなどわれわれをナビゲートしてくれる明確なものがあるなら,はたまた,患者の強い意思が明らかに医療の推奨に反していないなら,それに従える。禁忌による中止や延期,合併症の治療の先行などはその例である。しかし,経験豊富な外科医でさえ,手術の是非に迷っているのである。もしかしたら自分自身が知らないうちに,そのストラテジーの方向を好ましくない方へ導いてしまっているかもしれない。そのようなときに納得のいく方法は,その時点でのできるだけ可能な幅広い調査と自分自身の技術の評価,それをもとにした計画と代替方法の利点と欠点の評価,その治療にかかわる医療者との議論と理解をもとに,治療計画を策定することである。
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