別冊春号 2023のシェヘラザードたち
第9夜 語り継ぎたい先輩の「昔は〜」話—そこにはおばあちゃんの知恵袋がある
湯本 正寿
1
1日本大学医学部 麻酔科
pp.47-51
発行日 2023年4月24日
Published Date 2023/4/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200329
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昔は…偉大なる諸先輩方から「昔は〜だったが,最近の〜は〜」という,ありがたいお言葉を散々聴かされて育ってきたものだ。“親の小言と冷や酒は後で効く”ということわざがあるが,なかなか真をついている,と最近つくづく思ってしまう。
駆け出しの頃の気持ちをいつまでも忘れていないつもりでいる私ではあるが,いつのまにか歳を取ってしまったようである。周囲から「いつまで大学でのらりくらりしているの!」と言われながら,医者になって20年。人生の転機は数回訪れたが,なぜかまた大学に就職してしまった。若い医師たちと雑談や議論を交わしながら必死に自分の若さを保とうとしているのかもしれない。
麻酔科医になりたての頃は,麻酔をするのが大好きで,同期・同僚と夜遅くまで病院に残って急患が来るのを楽しみにしていたものである。意味もなく病院に長くいたのだが,その時に当直していた偉大なる諸先輩方からの「昔は〜」話が,今となっては宝物であったと思う。
個人プレイという麻酔科の仕事上の特性に加え,世間的に労働時間制限が厳しくなってしまったこのご時世,後輩と仕事終わりにたわいもない会話をすることも少なくなってしまった。また,感染症蔓延もあり,勉強会やカンファレンスもオンラインで行われ,息抜きの飲み会もない。
今夜は,“昔は〜”スタイルではないが,諸先輩方によく語られたことを,恥ずかしい自験例も紹介しながら,後期研修医へのメッセージとしたい。
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