第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
おばあちゃんの手
末松 由衣
1
1岐阜県立多治見看護専門学校3年
pp.664-665
発行日 2012年8月25日
Published Date 2012/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102152
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私は根っからのおばあちゃんっ子だった。私は3人きょうだいの末っ子で,姉と兄とも仲が良くいつも連れ添って遊んでいた。仲が良いゆえに頻繁にお菓子の取り合いになったり,指定席の取り合いになったりと喧嘩も絶えなかった。末っ子の私はその喧嘩に勝てるわけもなく,喧嘩しては泣き,祖母に救援を頼んでいたのを覚えている。そんな私のことを祖母はかわいがってくれ,きょうだいのなかでもひいきされ,喧嘩の仲介に入ってくれたりしていたので,そのことで兄とまた喧嘩になっていた。
小学生まではいつも祖母と一緒に一つの布団で寝たり,一緒にお風呂に入ったり,わたしは祖母のくっつき虫のようだった。祖母の手はごつごつと硬く大きくていつも不思議に感じていた。「おばあちゃんの手,なんでこんなにごつごつしとるの」。幼かった私は,祖母に何度もこの問いかけをしたのを覚えている。「なんでやろうね。由衣の手もおばあちゃんになったらこうなるんかもしれんよ」。くしゃくしゃの笑顔を見せながら祖母はそう答えた。子ども心に私は祖母の手が好きだった。そのあたたかく大きなごつごつとした手で頭を撫でられ,手をつながれるのが好きだった。
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