発言席
日本のおばあちゃん
鈴木 寿二郎
1
1東京都足立高等保育学院
pp.729
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206169
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村の墓場には,夢幻童子,泡沫童女というような戒名を彫った,江戸時代の子墓がたくさんのこっている。その命日を見ていると,7日から10日ぐらいの違いで,相前後して死んだ兄弟らしい戒名が,一つ墓に並んでいるのがあるが,これは急性伝染病で感染死したものだったのだろう。昔の子どもはよく死んだ。そのため15歳以下の子どもは,人口調査の対象から除外されたほどだった。
母は急いで朝食を食べ,赤ちゃんに腹いっぱいお乳を与え,えじこに入れるかおばあちゃんに預けるかして,そそくさと田畑に出た。あとは母が帰ってくるまで,乳をもらえない赤ちゃんが多かった。母がゆったりとした気持で授乳できるのは,夜,床に入ってからだけであった。それを「赤子は夜育つ」といった。母にとっても子どもにとっても,生きるに難しい時代であった。
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