別冊春号 2022のシェヘラザードたち
第9夜 勘違いは忘れなくてもやってくる…—「低侵襲性」に応えるために
西村 欣也
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学講座
pp.55-60
発行日 2022年4月15日
Published Date 2022/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200264
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今日の臨床医学は,医用工学の発展と相まって大きく変貌してきています。と同時に医療従事者には,膨大な情報量のもとでの新たな知識の吸収が求められています。手術医学では,高度の患者看視装置が開発され,かなり安全に患者管理が行えるようになりましたが,残念なことに,人間が関与しているかぎり人為的なミスは起こり得るもので,医療事故はゼロにはなりません。医療従事者も“ヒト”である以上,なんらかのミスや誤りを犯すことは避けられません。しかし,その数を減らすこと,これも“ヒト”のもつ能力により可能でしょう。
加えて近年は,ミスの原因・分析のみならず,柔軟に「うまく行っている」ことへの応答力(臨機応変:レジリエンス)も,安全を追求するうえで重要と考えられています。一人の患者から臨床現場を顧みると,安全性を確保するうえで,人と人との有機的な関係がかなり重要な要因になるものと思います。
そのうえで,安全性を提供するためには,高度な技術を体得する努力に加え,個々に応じた“工夫”が求められます。これらは机上ではなく,あくまで臨床の現場でしか体得できないでしょう。このためにも,一つ一つの症例を大切にしたいものです。
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