別冊秋号 —麻酔科医なら知っておきたい—血栓症・塞栓症
PART2 血栓総論
9 感染症による血栓症
松田 直之
1
1名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野
pp.59-65
発行日 2021年9月17日
Published Date 2021/9/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200225
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感染症では血栓形成の傾向が高まる。これには,交感神経緊張によるアドレナリン作動性α2受容体を介したカテコラミンの血小板凝集作用や,アデノシン二リン酸(ADP)を介したP2Y12受容体活性化による血小板凝集作用に加えて,微生物とToll様受容体Toll-like receptor(TLR)などのパターン認識受容体pattern recognition receptors(PRRs)が関与する。そして,これらPRRsを介して産生される炎症性サイトカインとして,血管内皮細胞でのインターロイキン受容体やtumor necrosis factor(TNF)受容体などを介した細胞内情報伝達シグナルが血栓形成に関与する。
微生物が生体内で繁殖する過程では,微生物の含有成分をリガンド(作動分子)とする受容体反応が進行する。この反応としての血栓形成は,微生物の種類(グラム陽性菌,グラム陰性菌,鞭毛の有無,ウイルス,真菌),微生物を構成する分子(内毒素:エンドトキシンendotoxin),分泌される分子(外毒素:エクソトキシンexotoxin),産生されたサイトカイン,これらの影響として凝固・線溶に関与する分子がどのように産生されるかを理解する必要がある。
このような感染症における凝固・線溶系反応の特徴は,必ずしも感染症に限ったものではなく,手術,外傷,広範囲熱傷,熱中症などの細胞死に伴う反応とも類似する。
本稿では,以上を踏まえて,特に感染症と血栓症の関係として凝固・線溶系反応を論じる。
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