今月の臨床 ピル─エビデンスに基づいて新ガイドラインを読み解く
ピルの副作用と新ガイドライン
1.血栓症 1)ピルと血栓症
福原 理恵
1
,
水沼 英樹
1
1弘前大学医学部産科婦人科学教室
pp.1448-1453
発行日 2006年12月10日
Published Date 2006/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101323
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はじめに
ピルの重篤な副作用の1つとして,血栓症がある.本邦女性においてはその発症率は実際低いものの,ピルが健常女性に投与される薬剤であることを考慮すると,その安全性についてはより注意すべきであると思われる.血栓症は深部静脈血栓症(deep venous thrombosis : DVT),肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)などの静脈血栓と心筋梗塞,脳梗塞などの動脈血栓からなるが,本稿では主に静脈血栓とピルとの関連について述べる.DVTとそれに起因して起こることが多いとされるPTEを総称して,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)と呼んでいる.
ピルは1960年に世界で初めてFDAにより承認されているが,その翌年1961年には早くもJordanらによりピル服用者での血栓症の合併症が報告されている.その後,ピル服用とVTEに関して多くの疫学的調査や臨床的に凝固学的検討がなされてきた.ピルのエストロゲン含量が多いほど,VTEのリスクも上昇することが報告1)され,その結果,FDAは1970年にエストロゲン含量を50μmg以下に抑えるよう勧告を出すに至っている.その後,ピルのエストロゲン含量は低用量化され,それに伴い,VTEの発症率は減少している.また,プロゲスチンの改良もなされ,第一世代のnoreth isteroneのグループから第二世代のnorgestrel,第三世代のdesogestrelおよびgestodeneのグループへと改良がなされたが,このプロゲスチンの違いによるVTEの発症に関しては,次項を参照されたい.
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