別冊春号 2020のシェヘラザードたち
第7夜 30年前の罠の数々—記憶に残る循環管理上の問題点
石黒 芳紀
1
1東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座
pp.37-42
発行日 2020年4月10日
Published Date 2020/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200122
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「私,失敗しないので」というフレーズがしばらく前にはやったが,私自身,幸い,ここ何年もの間はそれほど大きな失敗はしないで過ごしてこられた(否,失敗はしてきたが,記憶に残っていないだけかもしれない)。これは,なにも私の技術,知識が向上して安全な麻酔管理ができるようになった,と自慢しているわけではない。ただ単に,医療が進歩して麻酔を取り巻く環境が格段に安全になったからだ,と思っている。しかし,まだ医者になって駆け出しだった今から30年ほど前には,さまざまな手術で多くの罠があり,そうした罠にはまった結果,重篤な状態になった症例があり,強烈に今もなお記憶に残っている。その中から二つ,記憶をたどってお話ししよう。
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