別冊秋号 血圧
30 血圧をあやつる—術前内服薬と術中血圧の関係
平田 直之
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1札幌医科大学医学部 麻酔科学講座
pp.181-185
発行日 2019年9月14日
Published Date 2019/9/14
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200107
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患者の高齢化に伴い,さまざまな合併症を有する手術患者が増加している。術前に患者が合併している器質的循環器疾患として最も頻度が高いのは高血圧症である。周術期高血圧は,術中および術後の虚血性心疾患,脳卒中などの心血管イベントや出血のリスクを増加させ,死亡率を上昇させるため,術前からコントロールされていることが望ましいと考えられてきた。手術を受ける高血圧患者は術前からさまざまな降圧薬を内服している。降圧薬を内服している予定手術患者では,周術期の高血圧を避けるために薬物内服を継続してもらうことが一般的である。近年,降圧薬の主流となってきたアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はレニン・アンギオテンシン系へ作用し,糖尿病,心不全,左室肥大を合併した患者でも広く用いられているが,カルシウム拮抗薬やβ遮断薬と比較すると,麻酔に伴う循環抑制作用を助長する可能性がある。本稿では,術中血圧へ影響を及ぼす術前内服薬である降圧薬に焦点を当て,患者の周術期合併症を軽減するために,いかに血圧を「あやつる」かについて論考する。
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