別冊秋号 血圧
23 病態から見る血圧—血管麻痺症候群(vasoplegic syndrome)
澤村 成史
1
1帝京大学医学部 麻酔科学講座
pp.139-144
発行日 2019年9月14日
Published Date 2019/9/14
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200100
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症例
73歳の女性。腹痛を主訴に救急車で来院。
来院時現症:血圧74/56mmHg,心拍数142bpm,呼吸数26回/min,末梢動脈血酸素飽和度(SpO2) 99%,体温38.7℃
意識レベルの低下を認めたため気管挿管が施行された。
腹部CTでfree airを認め,穿孔性腹膜炎による敗血症性ショックの診断で緊急手術が申し込まれた。手術室入室時,ノルアドレナリン0.5μg/kg/min投与および50μgの間欠的投与を繰り返すも,収縮期血圧は60mmHg台で推移。経胸壁心エコー検査で左室はやや小さいが,収縮能は保たれていた。
手術開始後も大量輸液とノルアドレナリン投与にもかかわらず低血圧が持続したため,バソプレシン投与(2単位/hr)を開始したところ,血圧は徐々に上昇し,ノルアドレナリンは0.15μg/kg/minに減量できた。術中所見では直腸癌による直腸穿孔が認められ,直腸切除と人工肛門造設術(Hartmann手術)が施行された。
術後は集中治療室で呼吸循環管理,腎代替療法が行われ,順調に回復し,術後7日目に一般病棟に移動した。
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