別冊春号 2019のシェヘラザードたち
第25夜 麻酔中にアナフィラキシー症状をきたす3つの肥満細胞活性化メカニズム
森脇 克行
1
1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター
pp.155-160
発行日 2019年4月19日
Published Date 2019/4/19
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200075
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IgE抗体が関与する即時型免疫反応によって肥満細胞が活性化され脱顆粒が起こると,顆粒中のケミカルメディエータの作用によってアナフィラキシー症状が惹起され
る1〜3)。一方,肥満細胞がIgE抗体以外の機序で活性化されてもアナフィラキシー症状が起こる4〜6)。活性化機序の種類によらず肥満細胞の脱顆粒によりアナフィラキシー症状が生じるのである。
肥満細胞は1878年,ドイツの当時医学生であったPaul Ehrlichによって,結合識のなかにメタクロマジー(異染性)を呈する細胞として発見された。この細胞は顆粒を多く含む細胞であったため,貪食して肥満した細胞という意味のMastzellenと命名された4, 7)。
肥満細胞がアレルギー疾患と深い関係があり,ヒスタミンやロイコトリエンなどさまざまなケミカルメディエータを放出することが解明されたのは20世紀半ばのことである4, 7)。そして1990年頃までに,寄生虫の排除,異物の除去や,サイトカインを放出して急性炎症や創傷治癒機転に重要な役割を果たしていること,病的な慢性炎症の病態においても重要な役割を果たしていることが知られるようになった4, 7)。最近,薬剤による肥満細胞の活性化に重要な役割を果たす受容体が発見され6),非免疫学的な肥満細胞活性化メカニズムが解明された。本稿ではこれらの知見を踏まえ,筆者が経験した事例から得られた考察をもとに,麻酔中にアナフィラキシー症状をきたす3つのおもな肥満細胞活性化メカニズム(図1)と治療について述べる。
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