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■臨床の視点
▲抗うつ薬の作用機序はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用だけか?
神経障害性疼痛の薬物治療の第1選択薬である抗うつ薬は,セロトニン,ノルアドレナリンなどのモノアミン神経伝達物質の再取り込み阻害作用が主たる鎮痛機序と考えられている。しかし,抗うつ薬にはそれ以外のさまざまな作用機序も鎮痛作用に関与しているとされている。例えば,Na+チャネル遮断作用1),電位依存性Ca2+チャネル遮断作用2),NMDA(N-メチル-
D-アスパラギン酸)型グルタミン酸受容体拮抗作用などが挙げられる。さらに,オピオイド受容体,αアドレナリン受容体などへの親和性があるともされている。このなかでもNMDA受容体はグルタミン酸受容体の1つで,中枢神経系における興奮性神経伝達にかかわり,また慢性疼痛における中枢性感作の成立に重要な役割を担っている。それゆえ,抗うつ薬のなかでNMDA受容体拮抗作用をもつ薬物はより中枢性感作を緩和し,神経障害性疼痛に対する治療効果が高い可能性がある。慢性疼痛患者では脊髄後角で中枢性感作が起きており,それが痛みを増強したり慢性化させていると考えられている。そこで,3種類の抗うつ薬,三環系抗うつ薬(デシプラミン),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:serotonin norepinephrine reuptake inhibitor,ミルナシプラン),選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor,シタロプラム)の脊髄後角ニューロンでのNMDA受容体に対する拮抗作用の有無を明らかにする目的で,研究を行った。
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