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■臨床の視点
▲医療大麻の歴史
大麻を鎮痛薬として医療に利用することは古くから行われてきた。中国では,紀元前2700年ごろに大麻を鎮痛薬として利用したという記述が残されている。後漢時代に中国で活躍した医師である華佗は,アルコールとともに大麻を摂取させて手術時の麻酔薬として使用したという。インドでも紀元前1000年ごろから鎮痛を含めたさまざまな目的で医療大麻が使用されており,大麻服用に伴う精神症状についても克明な記録が残されている1)。
近代医学における大麻の利用は19世紀初頭までさかのぼる。19世紀末には欧米各国の製薬会社が大麻製剤を販売しており,19世紀半ばから20世紀にかけて,大麻の臨床利用に関する医学論文が多数発表された2)。大麻は鎮痛薬と同時に鎮静薬としても用いられ,傾眠傾向や多幸感など,精神症状を生じることが明らかにされている。19世紀末以降は,医療現場における大麻の利用は減少した。当時の大麻製剤がもつ薬効の個体差が大きく,期待される効果が得られないケースがあったこと,アスピリンやモルヒネなど,優れた代替品が開発されたことなどがその原因としてあげられる。1960年ごろには嗜好品としての大麻が流行し,毒性研究が盛んに行われた。大麻使用に伴う急性期症状には精神症状,口渇,頻拍などがある。慢性的な大麻使用は認知機能の低下や精神疾患の発症などと関連する3)。
大麻の有効成分はカンナビノイドと総称される。カンナビノイドに対する受容体および内因性の類似物質が発見されるに及び,体内には内因性カンナビノイドシステムと呼ばれるしくみが備わっていることがわかった。現在もカンナビノイドを利用した鎮痛方法が提案されているが,中枢神経への副作用が障害となって普及に至っていない4)。
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