連載 慢性疼痛の治療戦略 治療法確立を目指して・8
抗うつ薬
西原 真理
1
Makoto NISHIHARA
1
1愛知医科大学医学部学際的痛みセンター
pp.484-486
発行日 2017年5月25日
Published Date 2017/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200823
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慢性疼痛に対する薬物療法において,明らかに抗うつ薬が果たす役割は増大してきている.これは最近になって慢性腰痛症に保険適用を取得したデュロキセチンの影響もあるが1),慢性疼痛に対して「病態メカニズムに基づいた薬物療法のあり方」という考え方が広がってきたことも大きいだろう.しかし,本邦において痛みに対して適応があるのは,アミトリプチリン,デュロキセチンのみであることをまず意識しておかなくてはいけない.
最初に,慢性疼痛に抗うつ薬を使用するときに考えるべきことを挙げておきたい.それは患者のどのような病態に対して用いたいのかという目的をはっきりさせることである.具体的には,①神経障害性疼痛が背景にあると考えられる症例なのか,②痛みがうつ病,抑うつ状態に強く修飾されていると思われる症例なのか,という点である.ただ「この痛みは精神的なものが影響しているかもしれない」といった考えから抗うつ薬が処方されるという形は,できる限り避けていきたい.それは,抗うつ薬の痛みに対する経時的な効果の判定や,抗うつ薬を中止する方針などにも影響を及ぼすからである.
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