連載 在宅で必要なクスリの知識と服薬のコツ・10
抗うつ薬
藤澤 節子
1
1ひまわり薬局
pp.41-43
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100608
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高齢者の喪失感
高齢者は精神的にも,肉体的にも,少しずついろいろなものを失いながら長い人生の幕引きを迎えます。まだ働けるのに退職により職を失い,子供たちは独立し,配偶者,友人を次々に亡くし喪失体験が増えてきます。このような高齢者の在宅にうかがうと,喪失体験によるさびしさに耐えきれず,心を閉ざしたり,脳梗塞や老年痴呆などの身体的疾患や,薬の副作用から,うつ傾向になるお年寄りがたくさんおられます。気が沈んで,夜も眠れず,食欲もなく,全く何もできない状態です。社会的には,高齢化により,軽いうつ病や仮面うつ病の患者さんが増えています。
在宅での長い関わりのなかで初めてお会いした時はお元気で,前向きだったのに,喪失によって生活が一変してしまう方も少なくありません。高齢者でなくても,うつ病の有病率は5~6%といわれるように頻度が高い疾患です。食欲不振,不眠,意欲低下などは,高齢者にとっては,即ADLの低下につながります。高齢者のQOLを保つためには,うつ病になる原因を除くことや,薬物治療によって,コントロールすることが大切です。
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