特集 おくすり比べてみました 知っておきたい!同種・同効薬の使いどころ
抗うつ薬
橋本 保彦
1
1神戸学院大学薬学部 臨床薬学教育研究部門
pp.80-90
発行日 2023年1月5日
Published Date 2023/1/5
DOI https://doi.org/10.15104/ph.2023010016
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日常生活のなかで,誰しも気分の落ち込みや悲観的な考え方になってしまうことはある.これらを臨床現場の言葉で言えば「抑うつ状態」となる.この「抑うつ状態」と「うつ病」はイコールではない.「抑うつ状態」が持続し,程度が強く,時には極端な考えに偏り,当人の生活の質が著しく低下し,生活に支障を来したときに,病的であるといわれる.
うつ病の診断には,『精神障害の診断・統計マニュアル第5版』が用いられる.診断基準としては「抑うつ気分」「不眠または過眠」などの9項目がある.このうち,5項目を超えない場合で,症状の強さとして苦痛は感じるが,対人関係上・職業上機能障害はわずかな状態である場合に「軽症」,5項目をはるかに超え,症状として極めて苦痛で社会生活を営むための機能が顕著に損なわれている場合に「重症」,「軽症」と「重症」の中間に相当するものが「中等症」と分類される.
うつ病が発症する原因として,遺伝子,ストレス,人間関係などがあげられる.これらが単一あるいは複数の要因が複雑に絡み合って生じる.うつ病の神経学的な原因は,モノアミン仮説といわれ,脳内のセロトニン,ノルアドレナリン,ドパミンなどの神経系が低活動になっているというものである.したがって,現在,治療にはこれらの神経活動を活発にする薬剤が用いられる.
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