別冊秋号 疼痛と鎮痛
Part Ⅳ 病態へのアプローチ:慢性痛を中心に
13 オフセット鎮痛とは?—オフセット鎮痛反応の違いにより慢性疼痛患者を健康被検者と識別する
小日向 浩行
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1東京医科歯科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生・ペインクリニック科
pp.105-111
発行日 2018年9月20日
Published Date 2018/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200039
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■臨床の視点
▲慢性疼痛患者と健康な人との違いとは?
ペインクリニック外来を行っていると,急性疼痛患者はもとより多くの慢性疼痛患者の診療に携わることになる。慢性疼痛と一口に言っても痛みを引き起こす原疾患はさまざまで,原因により大きく三つに分けられる。炎症や器質的な変化による侵害受容性疼痛,中枢や末梢の神経の損傷による神経障害性疼痛,感情やストレスによる心因性疼痛である。実際にはこういったさまざまな原因が複数合併することが多く,またその経過のなかでそれぞれの占める割合も変化するため,治療法は複雑なものとなる。代表的な治療法は神経ブロック療法や薬物治療,運動・理学療法,心理・精神学的療法であるが,1つの治療法だけでは不十分であり,複数を組み合わせることが大半となっている。また薬物療法だけでも,慢性疼痛の原因の過程でどの場所にどのように効かせて鎮痛を図るのかなど複雑なため,治療に難渋することもしばしばではないかと思われる。
なぜ疼痛が慢性化するのか,健康な人と慢性疼痛患者では何が違うのか,といった研究はさまざまな視点から行われている。今回取りあげるオフセット鎮痛も,そういった研究の1つである。生理的に生体に備わった下行性疼痛抑制系と呼ばれる鎮痛機構の1つ(この鎮痛効果をオフセット鎮痛効果と呼ぶ)で,過去の研究より,慢性疼痛患者は健康被検者と比較してオフセット鎮痛効果が小さいと言われている。それはどうしてなのだろうか? そのあたりをもう少し掘り下げる研究をわれわれは実施した1)。
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