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【要 旨】
目 的:人工股関節周囲の軟部組織緊張が,脚長,脚オフセットに関する因子にどの程度規定されているか,ナビゲーションを用いて定量的に検討することである.
対象および方法:全身麻酔下にCTベースドナビゲーションシステムを用いてセメントレス人工股関節全置換術(THA)を行った片側罹患の股関節疾患患者89例を対象とした.32例が前側方アプローチ,57例が後側方アプローチで手術を行った.インプラント設置後,一定の牽引力と関節肢位で下肢の牽引を行い,骨頭の移動距離をナビゲーションで記録した.屈曲0°・15°・30°・45°の屈曲肢位それぞれで,体重の40%の牽引力で下肢を牽引した.牽引下骨頭移動距離と脚長,脚オフセットに関する7項目(術後脚長差,脚延長量,術後脚オフセット左右差,脚水平移動量,カップ設置水平位置・垂直位置,術後大腿オフセット)と以下の10項目[年齢,性別,アプローチ,診断名(股関節形成不全であるか否か),術前可動域(ROM)[屈曲,伸展,外転,内転],使用骨頭径,ステム前捻角]との関連を重回帰分析(stepwise法)で求めた.
結 果:骨頭移動距離は屈曲15°で最大となり,平均11±5mmであった.屈曲0°での牽引下骨頭移動距離は,術後脚オフセット差,脚延長量,アプローチ,術前伸展ROMと関連があった.屈曲15°での牽引下骨頭移動距離は,術後脚オフセット差,アプローチ,術前外転ROMと関連があった.屈曲30°での牽引下骨頭移動距離は,術後脚オフセット差,脚延長量,性別と関連があった.屈曲45°での牽引下骨頭移動距離に関連する因子は検出できなかった.
結 論:術後脚オフセット差は,屈曲0°・15°・30°の軟部組織緊張を規定しており,適度な軟部組織緊張を広い屈曲角度で得るためには,術後脚オフセットの左右差を最小化することが重要であることが示された.一方で術後脚長差は,軟部組織緊張と関連がなく,屈曲0°と30°において脚延長量と関連があり,この肢位での軟部組織緊張を優先すると,脚過延長になるリスクが示された.
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