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心電図同期下で撮像された冠動脈CTは心外膜にある冠動脈を詳細に描出でき,狭窄病変に対する高い感度と陰性的中率をもつため,冠動脈疾患の診断モダリティにおけるファーストラインの画像検査に位置づけられている1)。我が国では冠動脈CTが年間で約50万件も実施されるなど広く普及しているが,冠動脈CTによる病変評価の難しい点は,形態的な冠動脈狭窄度と機能的心筋虚血の重症度が必ずしも一致しない点である2)。心臓核医学検査や負荷perfusion MRIなどの心筋血流イメージングでは,運動や血管拡張薬などによる負荷中にみられる心筋血流の変化を画像化して視覚的に定性・定量評価し,心筋虚血を診断する方法である。安静時における心筋血流量は,冠動脈狭窄率が70%を超える高度狭窄に至るまで自己調節機能が働いて維持される。一方,運動や血管拡張薬による負荷状態では,狭窄率50~69%の中等度狭窄であっても非狭窄部位と比べて相対的に心筋血流量(myocardial blood flow:MBF)が低下し,安静時と負荷時を比べることで心筋虚血を検出できる。我々はMRIの高いコントラスト分解能に着目し,負荷perfusion MRIが負荷心筋SPECTや負荷心エコーと比較して,高い機能的心筋虚血の診断能を有することを報告した3)。しかし,視覚的評価は定性的で読影バイアスが働くため,再現性に乏しいことが問題である。そのため,ポジトロン断層撮像(positron emission tomography:PET)を中心に非侵襲的なMBFの定量評価や,負荷時MBFと安静時MBFの比である冠血流予備能(coronary flow reserve:CFR)を用いた病態評価と予後層別化に関する研究が進んできた。しかし厳密には,PETでは冠動脈ではなく「心筋」の血流量を計測しているので,米国核医学会と米国心臓核医学会から最近発表されたステートメントではCFRに代えて心筋血流予備能(myocardial flow reserve:MFR)を用いることが提案されている4)。
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