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安定虚血性心疾患(SIHD)とは,何らかの冠動脈病変を起因とし,慢性的に心筋虚血を起こす疾患群の総称である。この概念は同じ冠動脈疾患でも治療戦略が大きく異なる急性冠症候群(ACS)と区別するために必要な枠組みである。SIHDは古典的には冠動脈狭窄〔左主幹部(LMT)≧50%,その他の冠動脈≧70%〕によって,運動やストレスなどを契機として心筋虚血が誘発され,軽快や増悪を繰り返す疾患群とされるが,現在の概念では冠動脈の動脈硬化性狭窄のみならず,微小循環障害や冠動脈攣縮によるものも含まれる1)。
SIHDの診断・治療方針を検討するため,その予後を知ることは非常に重要である。SIHDに対する血行再建治療,薬物治療を検討したいくつかの研究がある。SIHD患者に対する治療としてカテーテルインターベンションと薬物治療を比較検討したRITA-22)*1試験では,心血管死は0.6%/年,非致死的心筋梗塞は0.6%/年であった。また,SIHD患者において,心血管死および非致死的心筋梗塞の抑制効果をカテーテルインターベンション+至適薬物治療と至適薬物治療単独で比較した試験であるCOURAGE*2試験3)においては,心血管死は1.4%/年,非致死的心筋梗塞は2.7%/年であった。これらは,さまざまなレジストリ研究のデータとも一致する4)。
しかし,個々の患者の予後については臨床的背景や冠動脈病変の解剖学的特徴などに大きく左右されるため,SIHDのマネジメントには病態把握や診断に加え,リスク層別化が非常に重要となってくる。例えば,非常にリスクが高い患者では,薬物治療に加えて積極的な血行再建術が予後改善に必要である。その一方で,リスクがそれほど高くない(そもそも予後が良いと予想される)患者では薬物治療が中心となり,不必要な血行再建術を避けることも必要である。以上をふまえて本稿では,SIHDの病態把握や診断,リスク層別化について考えてみたい。
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