特集 透析診療のすべて
Part 3 透析診療におけるトラブルシューティングと合併症管理
15.血液透析患者にアクセストラブルが起こったら—流体力学的特性から発するトラブルとその対処法を中心に
原田 裕久
1
Hirohisa HARADA
1
1東京都済生会中央病院 血管外科
pp.443-450
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901151
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血液透析に用いられる血管アクセス(VA)には,自家血管を用いた動静脈瘻(AVF*1),人工血管を用いた動静脈瘻(AVG*2),そして動脈表在化や長期留置カテーテルなどが包含されるが,AVFとAVGを合わせて「内シャント」(あるいは単に「シャント」)との呼称が一般的である。
最新の統計では,透析患者の89.7%でAVFが使用されており,また7.1%においてAVGが用いられている1)。合わせて全体の96.8%で内シャントが用いられており,透析の現場ではVAの同義語としてシャントと呼称されることが多い。本稿ではAVFとAVGを合わせて内シャントとの呼称を用いる。
AVFでは,表在静脈に高圧系の動脈血を流入させるため,特に吻合部付近,さらには静脈分岐部などにおいて,大きな流体力学的ストレスを生じ内膜肥厚の原因となる2)。また,透析のたびに太めの穿刺針を2本ずつ刺入するため,内膜肥厚や瘢痕による狭窄,血栓形成,あるいは壁の脆弱化による瘤化などを生じ得る。AVGでは,人工血管との吻合直下の静脈において,やはり流体力学的ストレスに起因する狭窄を生じやすく,トラブルの原因となり得る1)。
一方,内シャントの血流が過多になると心負荷が問題となるのみならず,スチール現象による肢末梢の虚血,あるいは静脈高血圧によるうっ血や浮腫などの多彩な病態を呈することがあり,やはり透析現場でのトラブルの原因となる。さらに,感染や瘤化など,対応次第では生命の危機となり得る病態に直面することも少なくなく,管理を誤ると命取りになることもある。
本稿では,内シャント関連のトラブル各論について解説する。
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