特集 透析診療のすべて
Part 3 透析診療におけるトラブルシューティングと合併症管理
14.血液透析患者に血圧低下・上昇がみられたら—適切なドライウェイトの検討が必須
羽深 将人
1
Masato HABUKA
1
1新潟県立新発田病院 腎臓内科
pp.437-442
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901150
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透析患者の血圧異常(血圧低下,血圧上昇)は,よく遭遇する問題の1つである。透析患者は,腎機能廃絶により体液量調節能が低下しているため,体液貯留状態,動脈硬化の進行程度など,血圧に影響する因子が個々に大きく異なる。
KDOQI*1ガイドラインでは,心血管合併症予防の観点から,透析前血圧140/90mmHg未満,透析後血圧130/80mmHg未満を推奨しており1),日本透析医学会の透析調査でも,収縮期血圧が120〜160mmHgで死亡率が最も低いU字型現象がみられることから,週始めの透析前血圧140/90mmHgを目標とすることは妥当であるとしている2)。しかし,これを目指した治療では透析低血圧が有意に多くなったとの報告もある3)。
『高血圧治療ガイドライン2019』では,現時点では透析患者の血圧管理における画一的な数値目標を決定することは困難であり,「出血性合併症を生じず,内シャント血流を維持できて,透析中の血圧低下を生じない程度の非常に広い範囲で,家庭血圧も参考にして患者ごとに安全域を定めて行うことが現実的」であると述べられている4)。透析低血圧は患者のQOLやADLを低下させ,生命予後にも大きな影響を与える。そのため,実臨床においても,透析患者の血圧異常の評価・治療の難しさを痛感している。
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