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ホスピスケアとは,人生の最終段階の患者とその家族に対し「QOLを改善するために緩和に役立つことを行い,緩和に役立たないことは行わない,生命の延長のみを目的にした治療を行わない」という考えである1)。日本ホスピス緩和ケア協会のサイトをみると,「その人がその人らしい生をまっとうすることができるように援助すること」とされる2)。疾患の初期は治癒を目指した治療の割合が大きく,疾患が進行するにつれて緩和ケアの割合が増加し,最終的には緩和ケアのみを行うホスピスケアとなる(図1)。
しばしば,ホスピスケアはホスピス病棟で行うものと誤解されているように筆者は感じるが,ホスピス病棟に限らず,救急室でも,ICUでも,急性期病院の一般病棟でも,外来でも,自宅でも,必要時には施行されることが重要である1)。
米国では,生命予後6か月以内と予測された患者はホスピスケアの適応とされ,悪性腫瘍に限らず,あらゆる疾患が対象になる1)。実際,2020年には米国で死亡した患者の47%はホスピスケアを受けていた3)。そして,ホスピスケアを受けた患者の疾患内訳をみると,がんは12.7%に過ぎない3)*1。一方,日本ではホスピス病棟の保険適応は,悪性腫瘍,エイズに限定されている4)。
日本では,人口1億2530万人に対し,年間137万人が死亡している。病院での死亡は60〜70%(80〜90万人)と多く,自宅での死亡は10〜15%(13〜20万人)と少ない。まだまだ病院での死亡が大半である。急性期病院でこそホスピスケアを充実させる必要があるが,日本では浸透していないと筆者は感じている。日本でも,本来はがんやHIVのみならず,すべての死にゆく患者にホスピスケアは考慮されなければならないと考える。
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