#総合診療
#書評:『死にゆく患者と、どう話すか』
佐藤 恵子
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1京大附属病院 臨床研究総合センターEBM推進部
pp.654
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200929
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本書は、著者の國頭先生が「死に臨んだ患者さんにどう対応したらよいか」について、看護大学の1年生、つまり、ついこの前まで高校生だった人たちと問答したり対話したりした様子をまとめたものである。死にゆく患者さんと話をするのは、がん領域の医療者であっても、しんどいことである。私も昔、乳がんで骨転移のある患者さんに、「よくならないのだったら、いっそのこと早く死にたい」と言われて往生した。医療者がへどもどする姿がみっともないのは自明であり、なるべく避けているのが無難でもある。「この病院ではできることがなくなりましたので、転院をお勧めします」という常套句は、患者さんが言われたくないセリフの1つであるが、医療側にとっては救いの抜け道であるがゆえに、今日もどこかで“がん難民”が生まれているのだろう。
しかし、「それをやっちゃあ、おしめえよ」と國頭先生は言う。「『どうせ治らないから』といって患者を見放すことは許されません。『死んでいく』患者といかに向き合い、少しでもベターな『ライフ』を過ごしてもらえるか、というのは我々の使命です」と、序盤から活を入れる(「はじめに」より)。理由も単純明快で、患者さんは死を迎えるその日まで生き続けるわけだし、果てしない孤独と山のような不安を抱えながら歩くのはつらかろう、だからそれを理解している人が三途の川の手前までついていかなきゃいけないのは道理でもあり、人情でもある。それに、心を穏やかに保てさえすれば、限られた時間を豊かに過ごすことができるだろう。おお、シャクにさわるくらいかっこいいではないか。実際は、かわいい学生たちに囲まれて、やに下がっているひひジジイにしか見えないのだけれど。
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