ベッドサイドの看護
死にゆく人への援助—全人的援助がしきれなかった事例
吉家 甲子
1
,
山口 芳子
1
,
千葉 由香子
1
1岩手県立磐井病院
pp.288-292
発行日 1979年3月1日
Published Date 1979/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918629
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はじめに
私たちが日常たずさわっている看護においての対象は人間であり,肉体とともに心を持っている存在です。それゆえ看護を行うにあたっては,患者をあくまでも人間としてとらえ,対処していかなければならないことは言うまでもありません.まして,死が避けられない人々にとって,私たちは死を回避することなく,全人的愛情に満ちた安らかさを与えられるような援助が大切ではないかと思いつつも,現実の看護の場においては,それらの援助が何らかの因子で阻外され,患者に精神的な安らぎを与えられず,また看護者も悔いを残すような結果となってしまうことが,往々にしてみられるのが現状です.
ここに,終局においては肉親の手厚い看護によって安らかな死を迎えることができたのですが,それまでの過程において,種々の原因により全人的に援助することがなされず,意気消沈してゆく患者を目のあたりに見て,看護における精神的援助の大切さを再認識させられました。この事例から,全人的援助がなぜうまくいかなかったか,今後いかにしていったらよいのかということを考えてみたいと思います.
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