特別記事
[鼎談]死にゆく人の地域在宅ケアを考える
林 謙治
1
,
岡部 健
2
,
蛭田 みどり
3
1国立保健医療科学院
2医療法人社団爽秋会岡部医院
3ケアタウン小平訪問看護ステーション
pp.134-139
発行日 2007年2月15日
Published Date 2007/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100745
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林(司会) 本日は,終末期医療を中心とされているお立場で,仙台市でクリニックを運営されている岡部先生と,東京都小平市で訪問看護の仕事をされている蛭田さんにお越しいただきました.死にゆく人の地域在宅ケアについて考えていきたいと思います.
延命医療中止事件が起きた背景
林 マスコミでも終末期医療の話が誌面を賑わしていますが,最近の出来事としては,厚生労働省から終末期の医療ガイドラインが発表されました.それに続き,日本集中治療学会からもガイドラインの更新,おそらく近いうちに日本救急医療学会からも出てくるかと思います.一方では,富山県射水市民病院からも終末期の方針が発表され,富山県の県立病院としてのガイドラインが発表される予定です.そのような一連の動きを踏まえ,まず延命医療中止事件の背景からお話しいただけますでしょうか.
岡部 まず,死の多様化が前提にあります.昭和20年代,在宅死率が90%だったのですが,延命技術が進歩し,医療技術をどこまで行うか,選択の必要性が生まれてきました.延命技術の選択肢が増えた現代では,方法論で言えば事前死決定しかありません.しかし,人間の死というのは縄文時代の5000年前,いや,それ以前からずっと続いてきたことで,死の多様性が生まれてきたのは,わずか戦後60年の話です.すると,この問題を医療的な判断だけに終わらせて本当にいいのでしょうか.緩和医療,ホスピスケアというのは,本来自然死「Natural dying process」に従うという前提があるわけです.
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