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Joseph Daniel Sapira(サパイラ:1936〜2018)1)は,ピッツバーグ大学医学部(UPMC*1に関連)を卒業,内科と精神科の専門医資格をもち,米国の複数の施設でファカルティとして活躍,日本でも教育回診をした経験がある。不朽の名著“The Art & Science of Bedside Diagnosis”(以下“Sapira”)の著者として知られている。
UPMCのDr. Micheal Lambが当院への教育回診の際,UPMCで行われたサパイラによるGround Roundsの映像を提供してくださったおかげで,私はその博識を垣間見ることができた。身体診察に関しては米国の頂点にいたと思われ,現在に至っても“Sapira”を超える本はないだろう。故に,身体診察の成書とされる“Bates' Guide to Physical Examination & History Taking”は,Dr. Lambによると“baby book”2)であり,“Sapira”を読むことを強く推奨された。
のちに私は日本語版の訳者の1人として選ばれ,この本を詳細に検証する機会を得たことは僥倖であった。奥深く難解な本ではあるが,記述の背景には何かしらの真実が隠されていることを知ることができた。本稿で取り上げる「コインテスト」は,気胸の身体所見として“Sapira”に記載されているが,元文献の引用が十分でないためにその価値が見いだしにくい。しかしこの徴候を学ぶと,身体所見から病気の診断を導こうとした先人の知恵が,画像診断の発達により受け継がれなくなってきた歴史を如実に物語っていることがわかった。少し脱線をしつつ,このことを示したい。
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