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急性腎障害(AKI)におけるボリューム管理では何が問題となるのか。
AKIは伝統的に,障害の原因部位により,腎前性,腎性,腎後性の3つに分類される1)。問題になるのは,腎性腎不全,とりわけ急性尿細管壊死acute tubular necrosis(ATN)と,心腎症候群cardiorenal syndrome(CRS)におけるボリューム管理である。
院外発症のAKIの原因として約70%が腎前性であった2)とする報告があるが,院内発症では約45%がATNであり,ICUセッティングでは70%程度までにその割合が増加する3)ことが知られている。ATNは,腎虚血,敗血症,腎毒性物質への曝露などに起因するが,最近は心臓外科関連AKI〔cardiac surgery-associated acute kidney injury(CSA-AKI)〕という概念4)も提唱されている。hypovolemia(血液量減少)による腎前性腎不全とは異なり,補液への反応性が不良であることが特徴であり,容易にvolume overload(体液過剰)をきたすが,その背景疾患の多様さ,重篤さから,ひと言で「適切なボリューム管理」といっても簡単ではない。
ATNの管理としてボリュームの最適化はよく知られているが,補液をすれば溢れ,利尿薬などで除水を行えば,腎虚血の悪化からたちまち無尿となってしまうことはよく経験する。「ARDS(急性呼吸促迫症候群)の管理としてできるだけドライサイドにもっていきたいが,残された腎機能を保ちながら,どの程度水を引けるであろうか?」など,特に肺保護の見地からATNの管理にはジレンマがある。
また,CRS,とりわけ急性非代償性心不全acutely decompensated congestive heart failure(ADHF)におけるAKIでは,腎うっ血をどのように評価し,利尿薬や限外濾過などをいかに組み合わせて治療戦略を描くかなど,やはりその管理に関して課題は多い。
つまるところ,この2つのAKIにおいて何を評価し,どのようにvolume overloadを乗り越えるか,ということが問題である。本稿ではAKI,とりわけATNにおけるボリューム管理と,ADHFを中心としたCRSにおけるボリューム管理における,ジレンマと方策について述べる。
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