特集 老年科
【高齢者診療の「要」】
5.高齢患者へのアプローチ—老年症候群と高齢者総合的機能評価(CGA)について
許 智栄
1
,
狩野 惠彦
2
HUH, Ji Young
1
,
Shigehiko KARINO
2
1アドベンチストメディカルセンター 家庭医療科
2厚生連高岡病院 総合診療科
pp.625-632
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900481
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
高齢者診療が一般成人と大きく異なる点の1つに,疾患への対応もさることながら,機能やクオリティオブライフ(QOL)の維持ないし向上に努めて対応しなければならない点が挙げられる。でなければ,疾患は治癒したにもかかわらず,その間に機能低下が進行し,QOLの低下した人生を受け入れなければならないという,高齢者を予期せぬつらい事態に追いやるリスクが一般成人に比べて高くなるためである1)。
しかし,高齢者に起こりやすい症状や徴候は,時にあまりにも多いため,見過ごされたり,医師と患者双方の「年のせい」というバイアスから詳細な評価が行われず,気がつくとより大きな問題となって健康被害をもたらす,ということが繰り返されてきており,残念ながら現在でも少なからず起きている。
このように見過ごされてきた症状や徴候を「老年症候群」ととらえ,積極的に評価し,介入することで,機能とQOLの向上に努める重要性ならびにその有効性を示したことが,そもそもの老年医学の始まりである2)。高齢者診療には老年症候群という高齢者特有の症状や徴候と,すべてをもれなく評価し介入していく方法,つまり高齢者総合的機能評価comprehensive geriatric assessment(CGA)を知ることが必要なのであり,本稿で順を追って説明したい。
Copyright © 2017, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.