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Case
CGAを実施した糖尿病の症例
患者:72歳,女性.
経口糖尿病薬をもらいに外来受診したところ,前額部に皮下出血がみられた.数日前に自宅で転倒し頭を打ったが,たいしたことはないという.詳しく話を聞き,全身の診察をしてみると,白内障に伴う視力障害,起立性低血圧によるめまい,下肢の筋力低下があり,MMSE(mini-mental state examination)は20/30であった.内服薬は経口血糖降下薬,降圧薬,消化薬,抗ヒスタミン薬,眠剤,尿失禁治療のための抗コリン薬が処方されていたが,どれが何の薬でどのように飲んでいるか曖昧であった.転倒してからは,日中自宅に1人でおり,脚が痛いので動きづらく,食事をせずに薬だけ飲んでいたとのことであった.この患者は今後,転倒を繰り返したり,薬の副作用が出てくる可能性,痴呆に伴う症状が進行する可能性が考えられたため,訪問看護師,MSW,薬剤師,PT,栄養士にも参加してもらい,CGAによる評価と今後のケア計画を立てた.
その結果,眼科にて白内障の手術を行い,眼科入院中に下肢筋力強化とバランストレーニングを開始するとともに,服用薬の種類を血糖降下薬と降圧薬だけに減らし,同時に服薬量を減らした.退院時には自宅を訪問し,転倒の危険となる障害物を除き,通路の段差をなくした.薬は1回量ずつを分けて薬箱に入れ,飲んだ後のシートは残してもらうようにした.退院後は通所リハビリを続けるとともに,昼食は配食サービスの利用を開始した.また看護師が定期的に訪問し,薬を規則正しく飲んでいることを確かめるとともに,血圧測定をし,痴呆の進行を思わせる症状がないか,チェックするようにした.以後,転倒することもなく,外来通院を続けている.
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