特集 高齢患者のせん妄へのアプローチ
高齢患者のせん妄へのアプローチ法
太田 喜久子
1
1聖路加看護大学
pp.312-315
発行日 1996年4月1日
Published Date 1996/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905054
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昨今,急性期ケアの対象に老人が増えてくるにつれて,急性期状況が契機となりやすい身体的,精神的な反応を示す高齢者に直面する機会も多くなった.なかでも,チューブ類を自分で抜く,不穏,昼夜逆転などといった,せん妄状態に基づく混乱した言動は,急性期に必要な治療やケアの継続を困難なものにさせている.せん妄は,注意力の低下を伴う意識の障害,記憶や思考,見当識障害を含む認知の変化,さらには幻覚や妄想として現われることも多く,短期間のうちに障害が出現し,その症状が変動しやすいことなどによって特徴づけられる.せん妄は,背景にある重篤な疾患を警告するなど患者の予後にかかわる場合もあるため,早期に対処する必要がある.また,二次的障害として転倒や骨折を起こすことなどがあり,適切な対応が求められる.
しかし,せん妄状態にある患者の70%以上が医師・看護婦によってせん妄であると認められていなかったという報告や,せん妄を痴呆と決めつけていたため対応が遅れたという例がみられるように,実際にせん妄状態をきちんと把握し,対応することは難しい.それは,せん妄そのもののとらえ方が一様でないこと,せん妄が起こってくる原因が複雑に絡まり合っていること,その症状の現われ方も多様であること,また効果のある対応策が明らかになっているとは言いきれないことなど,に起因している.
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