特集 周術期マネジメント
3.周術期の抗血栓薬の扱い—常に中止したほうが安全か?
猪原 拓
1,2
,
香坂 俊
1
Taku INOHARA
1,2
,
Shun KOHSAKA
1
1慶應義塾大学病院 循環器内科
2平塚市民病院 循環器内科
pp.263-270
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900157
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昨今,急性心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に対して,抗血小板薬が用いられることが一般的となり,またステント治療が導入されるに及んで,短期的に複数の抗血小板薬〔いわゆる2剤併用抗血小板療法dual antiplatelet therapy(DAPT)〕が用いられることも多くなっている。また,新規経口抗凝固薬novel/new oral anticoagulant(NOAC)*1の出現により,心房細動などに対する抗凝固療法が脚光を浴びており,その脳梗塞予防効果に注目が集まっている。しかし一方で,出血系合併症を恐れるが故の不用意な休薬が,ステント血栓症や脳梗塞をまねくことも時折見受けられる。さらに,その休薬による各合併症を恐れるが故のヘパリンの過剰な使用(いわゆるヘパリンブリッジ)も多いのが現実である。
従来は,医師の現場判断(あるいは力関係)によりこうした治療のバランスが決定されることが多かったが,さまざまな側面から休薬やヘパリンブリッジの是非についてエビデンスが集まりつつある。現在は,①なぜ抗血栓薬を内服しているのか,あるいは抗血栓薬を休薬した場合のリスクはどの程度かという患者側の要因と,②どのような手術をどの程度の緊急性で行う必要があるのかという手術側の要因を考慮したうえで,周術期に本当に休薬するべきか,あるいはヘパリンブリッジを行うべきかを判断することとなっている。
本稿では,具体的に抗血小板療法と抗凝固療法の症例を取り上げ,現時点でのエビデンスを吟味しながら,周術期の抗血栓薬の「バランスのとれた扱い」を模索していきたい。
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