特集 代謝内分泌
【コラム】妊娠と甲状腺疾患—母体と胎児の変化,それぞれへの影響を理解しておく
荒田 尚子
1
Naoko ARATA
1
1国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科
pp.70-75
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900131
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Basedow病や慢性甲状腺炎などの甲状腺疾患は,女性に多く,特に妊娠可能年齢で頻度が高い。日本における性別・年齢別通院率の調査では,同年齢女性の1000人に6〜9人は同疾患で通院中とされている。また,甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症は妊婦の1000人に1〜3人に合併するとされ,潜在性甲状腺機能異常までも含めると甲状腺機能の異常は数%に上ると推定される1)。
甲状腺機能亢進症が未治療またはコントロール不良の場合は,流早産や死産,低出生体重児,妊娠高血圧症候群,心不全,新生児甲状腺機能異常など,母体・胎児ともにその影響が起こり得,それらの発症リスクは一般妊婦に比較して高い。一方で,甲状腺機能低下症が未治療またはコントロール不良の場合も,流早産,妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剝離,低出生体重児,分娩後出血,児の発達への影響など,母体・胎児双方に悪影響が及ぶことがあるので,妊娠中のみならず妊娠前からの適切な管理が必要である1)。
妊娠前・妊娠中・出産後の甲状腺疾患の治療には,妊娠中の甲状腺機能の変動や甲状腺疾患が妊娠に与える影響,薬物治療の胎児への影響をふまえたうえでの管理が重要となる。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.