疾患の病態と治療 母体環境からみた胎児・新生児
母体の甲状腺疾患と胎児・新生児
水野 正彦
1
Masahiko Mizuno
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.713-716
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205472
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著者の教室での統計によると1),甲状腺疾患合併妊娠の頻度は,全分娩例の0.88%である。すなわち,1000の分娩について約9人が,何らかの甲状腺疾患を合併していることになる(表1)。甲状腺疾患のなかでもっとも多いのは,甲状腺機能亢進症で,これだけで全甲状腺疾患の85%を占める。その他は,甲状腺機能低下症が8%,単純性甲状腺腫が7%というように,合併頻度はきわめて低率である。
以上のように,妊娠に合併する甲状腺疾患としては,まず頻度の点においては甲状腺機能亢進症,すなわち主としてバセドウ病がもっとも重要であることがわかるが,病態やその治療が母体のみならず胎児・新生児に影響を与えるという意味においても,この甲状腺機能亢進症は,妊娠合併症として重要な疾患である。したがって,この小稿には,甲状腺機能亢進症合併妊娠について,その胎児・新生児に及ぼす影響を解説することにする。
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