特集 産科領域の感染症と看護
感染症合併妊娠が母体・胎児に与える影響について
八神 喜昭
1
,
中谷 剛彬
1
1名古屋市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.473-479
発行日 1987年6月25日
Published Date 1987/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207152
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はじめに
感染症合併妊娠の感染症として,従来より,結核・梅毒・淋疾等が代表的なものとして取り上げられてきたが,現在ではそれらの治療の確立によりほとんど消えたともいえる状況であるので,本稿では,これらを省き,抗生物質の使用により従来あまり問題にされなかった一般細菌の動向について概述し,さらに,最近話題にされ始めているウイルス感染をはじめとする2,3の特殊感染症について触れることとする。
産科領域の特徴として,妊娠に感染症が合併すると,時に母体および胎児(胎芽)に重大な影響を及ぼすことが認められる。したがって,私たちは妊娠初期よりの感染症合併妊娠について十分な知識をもち,予防管理に留意することが大切である。最近の化学療法剤(抗生物質)の目覚しい開発により感染症は克服されつつあるが,産科領域においては,胎児への影響を考慮して妊娠時感染症に対する薬剤の選択が制約されるため,治療に困難をきたす場合も多い。その意味で本稿では,妊娠による母体の変化,胎児の特性を解説しつつ,種々の感染症によって母体および胎児(胎芽)がいかなる影響を受けるのかについて概述する。
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