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循環作動薬は医薬品薬効別に強心薬,不整脈用薬,血圧降下薬,血管収縮薬,血管拡張薬などに分類されている。
循環作動薬中毒の原因としては,自殺企図,高齢者の誤飲,医原性によるものなどがある。これらの中毒に関する正確なデータは存在しない。そこで,日本中毒情報センター2015年受信報告1)を参照すると,自殺企図における医薬品別分類では中枢神経系用薬が81.5%と圧倒的に多いが,循環作動薬(循環器官用薬)は2番目に多く,5.7%と報告されている。循環作動薬中毒の原因薬物の内訳は,カルシウム拮抗薬calcium channel blocker(CCB)が最も多く,アンジオテンシン受容体拮抗薬angiotensin Ⅱ receptor blocker(ARB),α遮断薬の順となる。β遮断薬β blocker(BB)や強心薬の頻度は低い1)。また65歳以上の高齢者の医薬品の誤飲による中毒では循環作動薬は3番目に多く,54/307件(17.6%)となっている。多い理由としては,内服薬における処方せん1枚当たりの薬物種類数をみると2015年度のデータで内服薬総数2.86のうち,循環器官用薬が最も多く0.61(不整脈用薬0.03,血圧降下薬0.21,血管拡張薬0.14,高脂血症用薬0.14)となっており,本邦でも非常に多くの循環作動薬の処方が行われているためと思われる2)。そのため高齢化社会に伴い誤飲も増え,循環作動薬中毒の頻度が今後も上昇する可能性が高い。
次に各論として代表的な循環作動薬であるジギタリス,BBとCCB,ARBとACE阻害薬,抗不整脈薬,ニトログリセリンの中毒の成因や症状,管理について概説する。
Summary
●ジゴキシン,β遮断薬,カルシウム拮抗薬中毒の従来の特異的治療法としては,ジゴキシン特異抗体Fabやカルシウム,グルカゴン投与がある。最近注目されている治療法としては,高用量インスリン療法(HDI),静注用脂肪乳剤(ILE)の投与が挙げられる。
●循環作動薬中毒による心停止に対するコンセンサスの得られた治療法はない。機械的サポートとしては,ECMOが注目され,良好な成績が得られている。
●循環作動薬中毒に関する正確な統計データや,その特異的治療法に関する無作為化比較試験はなく,古くからの動物実験や複数のケースレポートにより支持されているものが多い。
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