特集 中毒
Part 2 診断と治療のアプローチ
【コラム】中毒と法医学
吉田 謙一
1
,
前田 秀将
1
Kenichi YOSHIDA
1
,
Hideyuki MAEDA
1
1東京医科大学 法医学分野
pp.638-640
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200424
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中毒は事故,自殺,他殺,精神疾患などに関係して発生する事例が多く,突然死に見える事例も少なくない。中毒を疑って解剖を行う際には,死亡に至った状況,死体所見などから中毒の原因物質を推定し,適切な検体を採取する必要がある。薬物が検出された場合も,その薬物が死因か否かについては,薬物の種類や文献上の致死濃度・中毒濃度,死亡状況,死体・解剖所見を考慮して判断しなければならない。中毒物質を利用した殺人,暴行,事故を見逃さないために,疑わしい事例は「異状死届け出」(医師法21条)をし,適切な解剖・検査を行うことが重要である。特に,臨床医が死亡原因として中毒を疑った場合には,その根拠や原因物質を警察や解剖医に伝えることで,原因の特定につながる例がある。本稿では実際にあった法医解剖症例を提示し,原因物質にどのように迫ったのかを解説する。
Summary
●一見して突然死と思われる例に,中毒の関連した事件や事故が隠れている。
●中毒の可能性が疑われる場合に限らず,死因が不明で中毒を除外できない場合には,異状死体として警察に届けるべきである。
●薬物使用中または直後の突然死,薬物中毒の可能性のある死因未確定例は,解剖,薬物種・濃度,既往症などについての検討を要する(警察に薬物中毒の可能性を伝える)。
●入院時の血液を凍結保存しておくと,後日,診断できる例や事件が発覚する例がある。
●慢性覚醒剤中毒者では,血中濃度が低いという理由だけでは中毒死を否定できない。
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